准教授 中尾 亮

所属:大学院獣医学研究院(獣医学部共同獣医学課程)

専門分野:獣医寄生虫学

研究のキーワード:節足動物、人獣共通感染症、フィールド、微生物叢、共生微生物

出身高校:初芝橋本高校(和歌山県)

最終学歴:北海道大学大学院獣医学研究科

HPアドレス:http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/organization/parasitol/index.html

※この記事は「知のフロンティア」第4号に掲載した記事を、ウェブ用に再編集したものです。

節足動物が媒介する病気とは?

吸血性の節足動物によって動物から人へ病原体が伝播されます

世界中には様々な種類の節足動物が生息しており、その一部は人や動物を吸血します。世界三大感染症の一つであるマラリアが、蚊によって媒介されることはご存知かもしれませんが、ほかにも多くの感染症が吸血性の節足動物によって媒介されます。節足動物によって媒介される病気の多くは、人獣共通感染症とよばれる人と動物の両方に感染する病気です。世界中では毎年のように節足動物が媒介する新しい感染症が報告されており、私たちが未だ知らない病原体が多く潜在していると考えられています。

どのような研究しているのですか?

私たちは、国内や海外のフィールドに出かけ節足動物を採集し、それぞれの節足動物がもつ微生物群集(微生物叢)を明らかにする研究をしています。人や動物の病原体が、どの地域のどんな節足動物から見つかるかを整理することで、どの地域にはどんな感染症が流行するリスクがあるかという情報を発信することができます。また、新しい微生物を検出することで、将来発生するかもしれない新興感染症に備えることができるのです。

国内外のフィールドでの調査の様子(左から、ザンビア共和国、ミャンマー連邦共和国、北海道)

どのような研究ツールを使うのですか?

微生物群集を明らかにするためには、それぞれの微生物の遺伝子の配列を手がかりにします。高速シーケンサーという遺伝子配列を大量に解読できる最新機器を用いて、微生物の遺伝子情報を一気に取得します。得られた膨大な情報は、スーパーコンピューターなどを用いて、世界中から集められた塩基配列データベースと照合し、微生物の種類を決定していきます。また、実験室ではマダニや蚊などの培養細胞を使って、微生物の分離を行います。分離した個々の微生物のゲノム(全遺伝子)情報を明らかにすることで、どのような特徴を持った微生物であるかを科学的に予想します。

共生微生物が感染症研究の鍵を握る?

共生細菌の顕微鏡像(上)とそれをマダニへ接種する試験(下)

節足動物がもつ微生物群集を調べていく過程で、人や動物に病気を引き起こす病原体以外にも、病気の原因とならない非病原性の微生物が多数いることが分かってきました。なかでも共生微生物と呼ばれ、宿主である節足動物が生きるために不可欠な微生物がいることが確認されています。一部の共生微生物は節足動物が合成できないビタミンなどの栄養物質を作ることが分かっていますが、そのほかの役割はほとんど分かっていません。また、節足動物が病原体を媒介できるかどうかが、共生微生物によって決定されることが報告され、共生微生物と病原体の間に密接な関係があることも分かってきました。つまり、節足動物や病原体のことを知るためには、共生微生物の役割を正しく理解することが必要なのかもしれません。これまであまり注目されてこなかった、人や動物に病気を起こさない共生微生物こそが、節足動物が媒介する感染症のコントロールに重要なのではないかと考え研究を進めています