准教授 磯部 公一

所属:大学院工学研究院・大学院工学院(工学部環境社会工学科国土政策学コース)

専門分野:地盤工学、基礎工学、地盤防災工学

研究のキーワード:構造物基礎、地震工学、防災、持続可能社会

出身高校:京都成章高校

最終学歴:京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻

HPアドレス:http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/geomech/

※この記事は「知のフロンティア」第4号に掲載した記事を、ウェブ用に再編集したものです。

現在の研究を始めたきっかけは何ですか?

兵庫県南部地震による高速道路の倒壊

この冊子をご覧になっている方には2011 年の東北地方太平洋沖地震を鮮明に記憶し、地震の恐ろしさを実感した方も多いでしょう。私が地震は恐ろしいものだと初めて身を持って体験したのが、1995 年の兵庫県南部地震でした。テレビ中継で映し出される高速道路や高層ビルの倒壊の様子に大変ショックを受けたことを今でも思い出します。震災を経験するまでは、道路や鉄道,電気やガスなどの社会基盤の存在を当たり前のもの、ありふれたものと捉えていましたが、これらの構造物は人の英知の結晶であり、人々の命、財産、生活を根底から支えていることに気づかされました。これをきっかけに、構造物の建設、設計方法に興味を持つようになり(皆さんは橋やダムのような巨大構造物がどのように造られるか、想像できますか?)、大学の進路、現在の研究内容にも影響を与えることになりました。

次世代スマートストラクチャーで地震に強い国土づくり

初めて実用化された鋼管集成橋脚

ここで紹介する鋼管集成橋脚という技術は、兵庫県南部地震による被害を教訓に、土木構造物の中でも特に重要構造物と位置付けられる橋梁の耐震性能向上を目指し、損傷制御設計の概念を取り入れた耐震構造技術です。損傷制御設計とは、地震時の構造物の変形の様子を正確に把握した上で、壊れると取替えが大変な部材(主部材)と、壊れても取替えが容易な部材(二次部材)とに役割をわけ、二次部材に損傷を集約、エネルギーを吸収させることで橋全体の損傷をコントロールする設計手法であり、高度な設計技術が要求されます。また、損傷部材の交換が容易なため、地震後の早期復旧が可能となり、経済への影響を最小化できます。同様の概念を取り入れた構造形式は世界でも数例しかない最先端の土木技術で、持続可能社会を実現する次世代スマートストラクチャーと位置づけられています。

これまでの阪神高速道路㈱との共同研究では、この構造形式をさらに発展させるために、損傷制御設計の概念を、橋脚を支える基礎構造(基礎は固い地盤に力を伝達する役割を果たす、まさに縁の下の力持ちです!)とその周辺地盤へも拡大適用させた、新たな構造物基礎形式を提案しています。

大型加震実験により耐震性能を把握

基盤を合理化した高耐震橋脚が居並ぶ

当該構造は、従来の設計概念を覆し、地上に見えている橋脚部分と地下に隠れている基礎部分を一体で設計するため、地盤も含めて構造物の地震時の変形をより高精度に予測する必要がありますが、逆に地震時の挙動を高精度に予測することが出来れば、当該構造を力学面でも経済面でも更なる合理化へと導くことができます。そのためには、信頼性の高い実験データとそれに立脚した数値解析によるアプローチが欠かせませんが、大規模な加震実験や数値解析を用いた最近の研究から、地震時の挙動を十分な精度で予測することが可能で、また当該構造物は大規模な地震に対しても十分な耐震性能を有していることが確認されました。そのため、現在では当該構造物の実用化がどんどん進められており、地震に強い国土づくりが今まさに実現されつつあります。

地盤災害の巨大化・多様化に対峙して

国道274号線(日勝峠)における斜面崩壊現場
地盤工学会の地盤災害調査団として調査を実施

近年、気候変動の影響により自然災害が巨大化していると感じる機会が増えています。ここ北海道においても、平成28年8月に発生した北海道豪雨災害により、甚大な被害が発生し、いまだその影響が影を落とす地域も少なくありません。積雪寒冷地である北海道は、これまで豪雨に対する経験値が少ないため、国内の温暖多雨地域と比べ豪雨による土砂災害、地盤災害の潜在的危険性が高い地域と考えられています。今後も同規模の豪雨の発生が危惧されることから、積雪寒冷地における地盤防災、減災のための取組みが求められています。最近実施している研究では、地理情報システムを用い、北海道における個々の斜面の危険度を、その斜面の地形および地質データから推定する手法を検討しています。具体的には、降雨を誘因とする斜面崩壊の発生箇所および発生要因などに関する被災履歴データを整備し、地形や地質などの素因データとの相関を統計分析することで、危険度の推定式を提案しています。温暖地域と比べて被災履歴が少ないため、ばらつきが大きく、まだまだ精度改善の余地はありますが、地域に根ざした研究も進めており、公共構造物のホームドクターの役割も果たしています。